わたしを「殺した」のは、鬼でした

(この女は一体何なんだ?)

 道間の女だ。道間の女だった女だ。

 千早の知る道間は、彼女とは真逆の性質を持った苛烈な人間たちのはずである。
 自分たちの都合のいい「正義」の名のもとに、異形を嗤いながら嬲り殺す、そんな人間たちだ。
 千早は、そんな女が狂うところを見て見たかった。

「俺が殺した。そしてお前は人の理から外れた」

 望んでいた反応が返ってこないので踏み込んだことを告げても、やはりユキは千早が望んだ反応を見せない。

「お前は、もはや道間ではない。――お前は、鬼だ」

 どうしてこの女は反応しないのだろうと、憮然としたものを感じつつさらに言葉を重ねると、ユキは細く息を呑んだ。
 だが、やはりそれだけだった。
 ユキから臨んだ反応が返ってこないことに少し苛立った千早は、彼女の細い肩を押し褥の上に押し倒す。
 至近距離で睨みつけ、そして嗤ってやった。

「鬼に汚された気分はどうだ?」

 さあ、わめけ、泣き叫べ。

 ――俺は、道間が狂うところが見たいのだ。