わたしを「殺した」のは、鬼でした

 女の首の手をかけたのは気まぐれだった……のかもしれない。
 何故かもう少し見ていたいと思った。
 同時に、自分たちこそ崇高であると信じて疑わない道間を、その女を「汚して」やれば――女は、どんな表情を見せるのだろうかと、おかしな興味が湧いた。
 汚して、道間が忌み嫌うものと同じモノに堕としてやれば、女は千早の前で狂うだろうか。
 それはそれで見世物としては一興かもしれない。

 鬼らしい残虐的な考え方で、千早は女の首を絞めた。

「お館様……」
「しばらく、あれは俺が見る。手は出すな」

 あの女がどんな鬼に変質したのかは知らないが、もともとそれほど力はないように見えた。他の鬼にいびられればすぐに死ぬだろう。せっかく拾ったおもちゃだ、すぐに殺すのは面白くない。
 青葉は何か言いたげだったが、千早はそれを無視して立ち上がる。
 そろそろ、あの女が目覚める頃だろう。