わたしを「殺した」のは、鬼でした

 ふう、と息を吐き出し漏れ出ていた妖気を抑えると、青葉が細く息をつく。
 青葉は、父が死に、千早が鬼の棟梁の座をついた百年前から千早の側近だ。
 付き合いはそれ以前に遡り、生まれたのが同じころだったため、幼いころから常に側にいた男でもある。

 鬼という種族は、完全に縦社会だ。
 力ある鬼が一族を束ね、彼らは力に従う。
 立場的には千早の従兄弟にあたる青葉が、何の異論も言わずに千早に従っているのは、二人の力の差が明白だったからだろう。
 この隠れ里の中で、千早に勝る鬼はいない。
 だから、いつもであれば青葉は千早に疑問を投げかけることすらしなかったはずだ。
 けれども、千早の行動がよほど引っかかったのだろう。珍しく、千早が連れてきた女を「どうするのか」と訊ねてきた。

(どうするのか、か)