わたしを「殺した」のは、鬼でした

 わたし、道間ユキが「破魔家」の家系である道間家に生を受けたのは、今から十五年ほど前のことだ。
 赤子だったわたしは覚えていないが、産み落としたわたしを見た母は悲鳴をあげ、父は代々当主に受け継がれる破魔の力がこもった太刀の切っ先を、産声を上げるわたしの喉元に突きつけたと言う。

 道間家は、破魔家と呼ばれる魑魅魍魎を払う一族だ。
 家の起こりは、遡ること江戸時代。
 先祖をたどれば平安時代。

 物の怪や鬼と言った「悪しきもの」を払うことを生業とする道間家において、尊ぶべきは「黒」だった。
 同時に、それ以外の色を、「鬼の呪い」と呼び忌み嫌う。

 ――わたしは、生まれながらにして髪が少し生えていたそうだ。

 そして、その色は、「赤」だった。