わたしを「殺した」のは、鬼でした

 ……ええっと。

 記憶がつながらなくて、わたしはお布団に横になったまま首をひねる。
 ここはどこで、わたしはどうして眠っているのか。
 わたしは確か、父の命令を受けた道間家の使用人に、山奥に捨てられたはずだった。
 彷徨い歩いているうちに小さな祠を見つけて、そこで膝を抱えて自分に訪れる死を待っていたはずだ。
 そして、綺麗な鬼に会った。

 ……そうよ、わたしは、鬼に殺されたはずよ。

 殺されたと言うよりは、情けをかけてもらったと言う方が正しいのか。
 舞い落ちる雪に埋もれながら徐々に命の灯が小さくなっていくわたしを、彼は一思いに殺してくれようとしたのだ。
 最後に、わたしの首にかけられた鬼の指にぐっと力がこもったのを感じた。

 それから記憶が途絶えているのだが……順当に考えたらわたしは死んだはずなのに、ここで寝ているのはどうしてだろう。
 それともここは死後の世界なのだろうか。