わたしを「殺した」のは、鬼でした

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 夕食を食べたのち、千早様はお風呂に入りに脱衣所へ向かった。
 中居さんがお隣のお部屋にお布団を敷いてくださり、綺麗な所作で頭を下げて去っていく。

 いただいた夕食もとても美味しかった。
 春の山菜を使ったご飯は品のいいお味がして、蛤のお吸い物は香りづけに柚子の皮が散らしてあって、口に含むと鼻から香りが抜けていって、口当たりもさっぱりしていた。
 天ぷらも、お刺身も、箸休めの酢の物も……すべてが美味しくて、ちょっと食べすぎてしまったくらいだ。

 千早様のお邸では、お休みを取っていた下女の方が戻ってこられたので、わたしはお台所に立つ機会は減ったけれど、今日の夕食を美味しそうに食べていらっしゃった千早様を見たら、お料理のお勉強もするべきだろうかと考える。
 千早様はお出汁がよく効いた、けれども薄味のものを好まれるので、今日のお夕食は口にあったのだろう。

 縁側の椅子に座って、すっかり夜の闇に覆われた空を見上げる。
 金色の綺麗な月と、無数の銀色の星が煌めいていた。
 こうして、穏やかな気持ちで夜空を見上げることなんて、道間で暮らしていたときは考えられないことだった。
 月は、星は、美しいのだなと、誰でもわかることを改めて思う。