わたしを「殺した」のは、鬼でした

「……幸せ」

 最近、特にそう感じる。
 こんなに幸せでいいのだろうか。
 どこかに落とし穴があるのではなかろうか。
 幸せすぎると不安にもなるなんて、はじめて知った。

 ゆっくり温まってお風呂から上がると、千早様が畳の上に仰向けに横になっていた。
 夕食まで休むつもりかもしれないけれど、何もかけないと風邪を引くかもしれない。
 押し入れからお布団を取り出して、千早様の上にかけようとすると、眠っていたと思っていた彼が目を開けてわたしの手首をつかむ。
 お布団ごとわたしを腕の中に抱き込んで、千早様が笑った。

「風呂の香りがする」
「お、お風呂上がりですから……」

 急な触れ合いにどぎまぎしていると、千早様が、わたしの湿っている髪に顔を寄せる。

「食事の時間まで少し寝る。付き合え」

 ダメだなんて、言えるはずもなかった。