わたしを「殺した」のは、鬼でした

「お風呂、お先に入りますか……?」

 夕方に到着したが、お夕食の時間まではまだ二時間くらいある。
 せっかく温泉に来たので入ろうと思ったけれど、千早様が先に入りたいかもしれない。
 千早様のお邸のお風呂も温泉が引いてあるので、千早様にとったら珍しくないものかもしれないけれど、千早様はもともとお風呂はお嫌いではない方だ。
 千早様がお先に入りたいならわたしはあとから入ろうと思っていると、千早様が不思議そうな顔をした。

「広いんだ、一緒に入ればいいだろう」
「そうですね、一緒に……え?」

 頷きかけたわたしは、びっくりして顔を上げる。
 脱衣所にはすでに二人分の浴衣が置いてあって、いつでも入れる状態ではあるけれど……一緒に?
 硬直するわたしを面白そうに見やりながら、茶碗に残ったお茶を一気に飲み干した千早様が立ち上がる。

「どうした? 湯に入りに来たのだろう?」
「で、でも、あの……っ」

 一緒に、は聞いてない。
 突然のことに青くなっていいのか赤くなっていいのかわからずにおろおろするわたしに、千早様が小さく噴き出した。