わたしを「殺した」のは、鬼でした

「そういうわけだから、誘って見なさいな。ここから少し山の方へ行ったところに、いい温泉があるのよ。子宝の湯って言われているから、新婚にはもってこいでしょう?」
「こ――」

 ボッと赤くなったわたしに、牡丹様が「あらいやだ初々しいわねえ」なんて笑う。

「……んー、夏の着物は、少し新調した方がいいわね。ユキのものも一緒に頼みましょう。少し似せて作らせたら、夫婦っぽいでしょう?」

 わたしが箪笥を開けたまま真っ赤な顔でおろおろしている間に、牡丹様が箪笥の中身を確認する。

「着物を整えるのはわたしでするから、ほら、千早を誘いに行ってらっしゃい」

 どこか面白がっている様子の牡丹様に背中を押されて、わたしは熱い頬を両手で押さえながら千早様の元へ向かった。