わたしを「殺した」のは、鬼でした

「でも、千早様はお忙しいので……」
「何言ってるの。あの子、結構暇よ。暇じゃなかったら、隙あらば昼まで惰眠を貪ろうとなんてしないわ」

 言われてみたら、一理ある……かも。

「夫婦水入らずで外出なんてね、子供が出来たらしばらくは無理なんだから、今のうちに楽しんでおく方がいいのよ。……ちなみに、子供が大きくなったら行こうとか考えても、いざその時になったら、昔のような情熱なんてなくなっていて盛り上がらないのよ」
「は、はあ……」

 わたしも行っておけばよかったわと舌打ちする牡丹様に、わたしは曖昧に笑うしかない。
 牡丹様に言わせれば、新婚気分なんて今しか味わえないんだからしっかり楽しんでおくもの、らしい。

「だけど、千早様のご気分が乗るかどうかわかりませんよ?」
「大丈夫よ、一週間くらい温泉でのんびりごろごろしましょうと誘って乗らないあの子じゃないわ。これ幸いと予定を立てるわよ。大手を振って怠惰にすごせるんだから」
「そう、でしょうか」
「そうよ。なんならこう言ってごらんなさい。温泉だったら、昼まで寝ていても怒られませんよって。一週間どころか一年くらい帰らないと言い出すかもしれないわ」

 いや、いくらなんでもそれは……ないと、言いきれないけれども。
 だけど、一年も帰らなかったら、青葉さんが怒って乗り込んで来そう。