……これで、わたしたちは、夫婦。

 お酒を飲んだからなのか、それとも違う理由なのか、わたしの顔が熱くなる。
 胸の奥が震えて、じんわりと目が潤んできた。

 今まで、そしてこれからの生の中で、これほどの幸せがあるだろうか。
 この世に生まれ落ちた時から、わたしの未来はあってないようなものだった。
 牡丹様がすっと近づいて来て、わたしの目元を手拭で拭ってくれる。
 千早様は優しくわたしを見つめていて、目が合えば、千早様が手を伸ばして、わたしの目じりに触れた。

 おめでとうございます、と牡丹様と青葉様がおっしゃって、その場に頭を下げる。
 お二人に頭を下げられるのが申し訳なかったけれど、これは祝言のしきたりらしいので、わたしはお二人に「ありがとうございます」と頭を下げ返した。

 そのあとのことは――正直、気持ちがふわふわしていてあまり覚えていない。
 お食事をとって、いくつかおしゃべりをして、牡丹様に連れられてお風呂に向かった。
 お化粧を落とし、髪を解いて、白の単衣姿で寝室へ向かえば、千早様がぼんやりと窓の外を眺めていた。
 一緒についてきてくれた牡丹様がわたしの肩をぽんと優しく叩いて、それから部屋を下がる。

 千早様がわたしを振り返り、おいで、と片手を差し出して――


 わたしたちは、夫婦になった。