わたしを「殺した」のは、鬼でした

「死ぬのか」

 鬼は一歩わたしに近づいて来て、もう一度つぶやいた。
 薄く笑おうとしたわたしの側に、鬼が膝をつく。
 鬼は、ゆっくりと手を伸ばして、わたしの首に指を巻き付けた。
 軽く力が込められて、わたしは完全に目を閉じる。

 死に逝くわたしに、止めを刺してくれようとしているのだろうか。
 殺されそうになっているのに、わたしは何故かそのことに安堵してしまった。
 このまま鬼が立ち去り、一人で死ぬのを待つよりは、彼の手にかかって死ぬ方がましだと、わたしは何故かそう思ったのだ。

 徐々に徐々に力が込められていく。
 すでに朦朧としているからか、あまり苦しさは感じない。

「……死ぬのなら、俺の手で殺してやろう。道間」

 それが「道間ユキ」として聞いた、最後の言葉だった。