わたしを「殺した」のは、鬼でした

「いったい何を騒いでいるんだ」

 お二人の言い争いの声を聞きつけて、千早様がお部屋にやって来た。
 牡丹様と青葉様が同時に千早様を振り返る。

「千早、鶴よね⁉ ね⁉」
「お館様、紅葉ですよね。紅葉しかありませんよね⁉」
「…………ユキ、これはどういうことだ?」

 千早様がおおよそ何の騒ぎかを把握したような顔をしながら、念のためにとわたしに訊ねて来る。
 だけど、わたしとしても何と答えていいのか。
 お着物の柄をめぐってお二人が口論しています、と正直にお伝えするのは憚られた。何故なら、わたしの婚礼衣装でもめているからである。
 仕方がないので、婉曲に、やんわりとお答えする。

「婚礼衣装が、決まらなくて……」
「そんなもの、ユキが好きなものを選べばいい」

 千早様がそうおっしゃったせいで、牡丹様と青葉様の視線がわたしに向いた。

「ユキ、妻となるのだからお館様を立てるべきだ。そうだろう?」

 そう言いながら、紅葉柄を強く推してくる青葉様。

「ユキ、鶴はね、縁起がいいの! 夫婦仲よく健康で長生きしましょうっていう意味がこもっているのよ! ユキは千早とずっと仲のいい夫婦でいたいでしょう?」

 そう言って、鶴を強く推してくる牡丹様。
 ずずいと近づいてきたお二人に挟まれて、わたしはあわあわとお二人が抱え持って来たお着物を見た。