わたしを「殺した」のは、鬼でした

 慌てて起き上がろうとすると、すぐ近くから声がした。
 首を巡らせると水を入れた桶を持って、千早様がお部屋に入ってくるところだった。

「気が付いたみたいだな」

 わたしの側に腰を下ろし、千早様がすっと手を伸ばしてくる。
 わたしの額にひんやりとした千早様の手が触れた。
 気持ちよくて、うっとりと目を閉じようとしたところで、そうではない、と千早様を見る。

「千早様、わたしは……」

 あれが夢でないのなら、わたしは三人の男たちに連れ去られて、危うく殺されるところだったはずだ。
 最後に覚えているのは、赤い炎の記憶だった。
 死にたくなくて、千早様に会いたくて、それをきつく願ったところまでは覚えている。
 だけどそのあとがつながらない。
 わたしはあれからどうなったのだろうか。
 ここが千早様のお部屋で、千早様が目の前にいらっしゃることから、わたしはまだ生きている……のだと思う。