わたしを「殺した」のは、鬼でした

(今はそんなことを考えている場合ではないな)

 相手がどこの誰であれ、ユキを連れ去ったことは確かだ。ユキが自らついて行くとも、この場から逃げるとも考えられない。
「牡丹に報せて捜索隊を指揮させろ。お前は邸の中に手掛かりが残っていないか調べてくれ」
 千早は、青葉の返事を待たずに走り出す。
 雪の上に残された足跡を追いながら、千早は自分の腹の中で、怒りの感情がとぐろを巻くのを感じていた。

(俺のものに手を出すなんて、いい度胸だ……!)

 こんなに感情が乱れたのは久しぶりだった。
 それこそ、父が道間の女狐に殺されて以来かもしれない。
 しばらく走り、石畳の道に出る。
 さすがに人通りが増えるこのあたりでは、無数の足跡の中から同じ足跡を見つけるのは不可能だろ――普通ならば。

(舐めるな)

 すぅっと千早は目を細める。
 すると、無数に点在する足跡の中から、千早が追って来たものだけが赤く光った。足跡にわずかに残っていた妖力を可視化したのだ。