きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

 半身を映すサイズの鏡が、この家では1番大きなものだ。
 リデルがそれを運んで来れば、後の3人が自然光が入る窓際にテーブルを移動させていた。
 リデルが渡した鏡は、壁側に向かって倒すように斜めに立てかけられ、その前にエルザが持参した化粧品と道具を並べたら、テーブルは簡易化粧台に変身した。

 これで準備が終わり、リデルは椅子に座る前に、丁寧に3人に頭を下げた。  


「どうぞよろしくお願い致します」



  ◇◇◇

 

 それからどれくらいの時間が経っただろう。 

 
 貴族のご令嬢って、お茶会や夜会に出る時は、毎回こんなに大変なの……と。
 自分のために、ここまで手間を掛けてくれている人達に気付かれぬよう、リデルはそっと息を吐いた。
 それでも、確実に自分が美しく磨かれているのは実感出来て、彼女の心を躍らせた。
  
 
 エルザによる髪のセットとお化粧が終わり、レイカ担当のフィッティングが始まる前に、お花摘みと水分は取ったが、それ以降は何もせずに、ドレスを着付けて貰い。

 指示されるままに、あちらを向き、こちらを向き、立つ、座る、腕を上げて上体を伸ばす、など。
 そんな動きを繰り返して、つままれ、縫い直されて。 
 あらゆる角度から着付け具合を、周囲を囲んだ3人から何度も確認されて。
「はい。お疲れさま」と仕上がりに満足そうなレイカに声をかけられて、ここまでの工程が終了した。