その口から同時に
「お前がグーレンバイツのパリロゥの婆さんに気に入られて、この国に本格的に参入する窓口に決まったのは、知っているから」とも言われて。
 お互いに立場は変わったのに、腹黒なのは相変わらずだった。


 グーレンバイツからはリデルの父ランベールと弟アンリが来てくれた。
 ランベールはデイヴに何度も御礼を言って、固く抱き合い、酒を汲み交わして、一緒に釣りに行く約束をしていた。 
 リデルが拐われる前に生まれた赤子だったアンリとは、かの国では互いに記憶に無いせいか、微妙に距離があったのだが。
 今回は素直に姉を抱き締めて、結婚を祝った。
 

 
 リデルのウェディングドレスは、ベージルーシュの母が着たドレスで、大切にしまわれていた思い出のドレスを、グーレンバイツを去る日に父が渡してくれた物だ。
 それを密かにエルザが本邸に持ち込み。
 メイド達がリデルのサイズに仕立て直しをしてくれたのだった。

 彼女達を代表して、エラと共にベレスフォードまで来てくれたのは、お馴染みのエルザとレイカで。
 今回もふたりはリデルに、美しい魔法を掛けてくれた。


 エラが御祝いと別に、ふたりに差し出したのは、根付きのビオラの苗だった。
 ご領主様が本邸以外に、白いビオラを育てることを解禁し、新しい特産品として生産量を増やしていく、と領内の花農家に推奨された、と言う。
 意外にも真面目に領地経営に向き合うようになった父親は、どうしても目障りだった息子が出ていき、亡くなる最後まで甘えた家令も居なくなり。
 ようやく大人になって、自分に向き合えるようになったのだ、とジェイは思った。

 これなら、伯爵があの伯爵夫人と離縁するのも、そう遠くない未来に思えた。