勝者ユーシスの杯に美酒を注いだのは、王城に残していた彼の子飼いだった可能性が高いが、勿論ジェレマイアは余計な詮索はしない。
 


 そして、グーレンバイツから帰国して3ヶ月後。
 ジェレマイアとリデルの結婚の日取りが決まった。

 彼はイングラムからウィンクラー山を挟んだベレスフォード伯領に家を構え、リデルを迎えるのだが、その前に片付けなくてはならない事があった。
 婚姻に向けて、新しい戸籍が必要になったのだ。


 ジェレマイア・コートをイングラム伯爵コート家から勘当する旨の届け出が、父親だった当代伯爵から王家に提出されたので。
 彼は平民になり、その名をジェイ・リーブスに改めた。 
 
 名をジェレマイアからジェイに変えたのは、平民でこんなに長い綴りの名前が無いからで。
 姓にリーブスを選んだのは、亡くなったリーブスは他には身寄りが無く、死亡後彼の戸籍が抹消されたからだ。
 それ故、ジョージ・リーブスの養子となったわけではないが、それでも彼の家名は残る。
 冷たい両親から無視をされて傷付いた幼いジェレマイアを気遣ってくれた彼の家族になれたようで……ジェレマイアは新しい戸籍の申請書に、迷わずその姓を書いた。