王妃は離縁されて実家に戻され。
 王弟として王城で大きな顔をしていた公爵は病を得て亡くなって。
 何故か後継者が跡を継ぐ事はなく、そのまま筆頭公爵家は取り潰された。

 他国の王女を娶るはずだった第1王子の婚約は解消されて、莫大な賠償金が支払われた。
 その後、彼は幼馴染みの侯爵令嬢と結婚したらしいが、婚姻式も無く、離宮にでも移り住んだのか、新婚のふたりの姿を王城で見た人は居ない。
 代わりに、大主教に預けられて、神の導きで心を入れ換えた元第2王子が復権して立太子式は執り行われた。


 
「俺の回りは聖下の息のかかった奴等で固められたが、治世を始める面倒なあれこれを、全部任せていいんだから、こんなに楽な事はないよな。
 神の下僕が俺の御輿を担いでくれるのなら、何処へだって運ばれてやる」

 ジェレマイアがリデルを迎えに行くために、テリオスより一足先にシェイマスを発つ時。
 別れ際に声を潜めたテリオスは、あの本心を隠した微笑みを浮かべる王子の顔を取り戻していた。