「……それは、やはり御方様が亡くなったショックで?」

「それが大きいだろうけど。
 ……マイアだから話すけど、その前にお嬢様が子守りに拐かされてね、今も見つかっていない。
 最初は閣下もそりゃ必死になって探されていたんだが、御方様が亡くなって……もう諦められたんだと思う。
 その上、拐かしの犯人がお嬢様の魔力量を恐れた第1夫人とその実家だ、って判明してね……
 それで、もう完全に気力を失って閉じ籠ってしまわれた。
 議員も辞められてしまったし、皇帝陛下のお召しでもない限り、帝都には出て来られないんだよ」




 ジェレマイアはグーレンバイツでアメリから聞いた、リデルの誘拐の理由と父親の現状を、リデルに隠さずに伝えた。


 リデルが実家に戻りたいと言うのなら、デイヴに反対されても連れて行く。
 実の父親がとんでもない奴だったら、身体を張って彼女を連れて帰る。
 そのために、剣も体術も語学も努力して、身に付けた。


「これを聞いて、決めるのはリィだ。
 俺は直接、君のお父さんには会っていない。
 この話だって、あくまで伝聞でしかない。
 だけどね、分かっただろう?
 その力を恐れられて、誘拐されて。
 犯人の手から次々に渡されて、お父さんの手が届かないように、帝国外へ、他の大陸へと移された。
 君は捨てられた子じゃない。
 力が存在しないこの国に、置き去りにされた子だった」