その上で、会頭はジェレマイアの拙い発音の帝国語を聞き、それが独学であると知り、
「気に入った」と大笑いした。
 それからの彼女はまるで、ジェレマイアの祖母のように。
 彼を自分の孫のように扱った。


「あの……ベージルーシュ侯爵家の事は、お詳しいですか?」


 帝都のホテルを引き払い、会頭の自宅でお世話になっていたジェレマイアは、思い切って会頭アメリ・パリロゥに尋ねた。


「ベージルーシュ……マイアと何の関係が?」

 いくら世話になっていても、アメリにリデルの事を話す気は無いので、裏取りの出来ない作り話をする。


「亡くなってしまったのですが、先代の祖父が昔お世話になった、と聞いていて。
 グーレンバイツに来たからには、ご挨拶した方がいいのか、分からなくて」

「……お世話になった、と言うなら。
 侯爵閣下じゃなくて、御方様の方じゃないか?
 先代様はそう仰っていなかった?」

「御方様?」

「言い方はあれだけど、侯爵閣下最愛の第2夫人で癒し手を持っていらして、市井におられた頃に沢山の人を救われていたんだよ。
 それはそれは、国外からも大勢来ていたから、先代様もそうじゃないの」

「……」

「残念だけど、今はご挨拶は遠慮した方がいい。
 御方様が亡くなられてからは、閣下は領地に籠っていらっしゃるし、ベージルーシュまで行っても、会ってくださらないだろうね」