ルーファスは、あのクズ野郎のゴードンの弟で、兄の代わりに公爵家の後継者になった、父よりも兄よりも謙虚で優秀な少年だ。
 今回の内乱の咎で、まだ11歳の彼が公爵と共に処刑されるのは余りにも哀れだ、神のご慈悲を賜るべき、とのテリオスの訴えを受け入れたのだ。

 そのテリオスの満足気な様子に、ジェレマイアは余計な事は言わないが。
 おそらく、この目の前の腹黒よりルーファスの方が操りやすいと聖下が判断したのは間違いない、と思われた。
 ルーファスの身分は公爵家だが国王陛下の甥に当たるので、王家の男子として血筋も問題なし、と教皇猊下への面目も立つのだろう。

 そのように、万全に準備された彼のグーレンバイツ入国は、想像していたような苦労もなく、滞りなく。
 かの商会会頭と面会までこじつけた。

 その結果、ジェレマイアの説得など必要は無かった。 
 既に商会側は、その情報網から、これ以上公爵に肩入れしても、旨味は無いと判断していて。
 今回の内輪揉めには、どちらにも加担しない、と密約を交わす事が出来た。