「俺は荒事が苦手だし、嫌いだ。
 争いは頭脳戦、出来れば情報戦にしたいところだが、そんな悠長にしていられなくなった。
 とにかく北の連中には、このお家騒動に出張って貰いたく無いんだ、分かるだろ?
 北の奴等は魔力を用いて戦う。
 風を吹かせ、雨を降らせる。
 火を飛ばし、雷を落とす。
 他にもどんな攻撃があるのか、把握しきれない。
 だが、叔父貴が北大陸で頼れるのは、グーレンバイツの商人。
 商人と言うのは利の無い方には傾かないんだよ」

「……俺を北に……グーレンバイツに向かわせるのは、こちらに。
 テリオス殿下に味方に付くように説得させるためですか?」


 俺の役割はそこで、テリオスはいずれはそうなると予想して。
 だから、言語の出来る俺を呼びたかった?
 ここまで来させて、王族達の聞きたくもない秘密を話す。
 それだけでも逃げられなくしているのに、リデルの名前を出し、更に雁字搦めにしようとする。
 側近に働かせて、自分は担がせた御輿の上で楽をする、そううそぶいたテリオスを、俺はどうして信じたのか……