「そう、貴女……思っていたより手強いひとなのね」

「不敬な事を申し上げてしまったのなら、礼儀知らず、言葉知らずの愚かな平民の娘、とご容赦くださいませ。
 ウエストヒル様におかれましては、わたしなど取るに足りない者でございます」


 貴族令嬢がすると聞くカーテシーなど、リデルは出来ないし見たことも無くて、ただ深く頭を下げた。


「誤解しているのは、貴女の方だわ。
 わたくしはジェレマイア様の事は何とも思っていないのに……
 むしろ、貴女方おふたりを応援しようとしていましたのよ?」
 
 
 先程とは違い、今度は丁寧な言葉遣いに舵を切ったようだ。
 リデルの頭上からベアトリスの話は続けられるが、顔を上げていい、とは言われないので、そのままで聞く。


「だから貴女方の事は認めて差し上げようと決めていた。
 リデルさんは看護士でしょう?
 わたくしの専属として、邸に部屋を与えてあげようと思っていたくらいよ。
 そうすれば、3年なんて待たずにいつでも、愛するあの方と会えるでしょう?
 別邸なんて構える必要もないから、外からは愛人だとばれないわ。
 貴女はここまで譲歩しても、わたくしに協力する気はないのかしら?」