それをそのまま話せないジェレマイアの逡巡を察したデイヴが頭を振った。
 テリオス殿下と何らかの約束をしていて、彼に会おうとしているのを、理解したからだ。


「分かりました、もうそれについては聞かないでおきましょう。
 尊き青い血に私は関わりはないし、聞かなければ知らない事は話せない」

「すまない、そう言って貰えると助かる」



 明らかにホッとした様子のジェレマイアは、会った時から持っていた荷物から畳まれた1枚の地図を取り出して、テーブルの上に広げて見せた。


「ウィンクラーの山越えルートを、出来れば2日で。
 ここから抜けて、川沿いを進む。
 ここで一旦街へ出て、馬と食料を買い、素泊まり宿で1泊する。
 翌日にはこっちの街道を駆けても、やはり1週間は掛かると見ている」

「それは上手く動けたらで、3日は見ないと。
 ウィンクラーの山越え……今年は暖冬で雪が少ない。
 空を見てもしばらく晴天は続きそうだし、それで山越えにしたんですね。
 例年よりは厳しくないでしょうが、夜は絶対に歩かない方がいい。
 あと、食料確保は?」

「今日、リデルを待つ間に、水と干し肉と乾パンと。
 少しずつ胃を小さくしてきたし、貴方から処方されていた栄養薬、あれを貯めていて持ってきた」

「それでか! 食欲がないとか言って!
 ……ところで、山越えをその格好で?
 わざわざ凍死しに行くつもりですか!」

「……マントには毛皮が……
 これじゃきついのは分かっていたが、家を出てくるのに、これ以上の格好は出来なくて」