人には言えない闇を抱えた王子様は、何故だかジェレマイアを同類だと見破って、他に誰も居なければ、本音を口にする。
 が、それも本音のようにこちらに思わせたいだけで、彼の誠がそうなのかはジェレマイアにもわからない。



「クソ真面目なケインは哀れだったが、ゴードンを堕としてくれたのは、あれは使える女だな」


 哀れなケインは婚約破棄された侯爵家の次男、ゴードンは『ムカつくあの馬鹿』と言われた公爵家の従兄弟の名前だ。
 あれと言うのは、ミネルヴァ・ロバーツの事だろう。

 ケインの家は中立派だが、ゴードンの筆頭公爵家は第1王子に近い家門だ。
 同い年だったから、ゴードンはテリオスと行動を共にしていたが、時々彼に対して見下す様な物言いをしていた。
 それをテリオスは聞き流していたので、ゴードンはますます不遜になっていったが、テリオスは敢えてそれを狙っているようにジェレマイアには見えていた。


 もしかしてミネルヴァは、公爵家の醜聞を狙った第2王子支持派閥が用意したハニートラップ要員なのだろうか。
 そうでもなければ、学院のトップ階級の貴族子息を2人も堕落させ、今も男子生徒を周囲に侍らして学院内の風紀を乱す男爵令嬢ふぜいが、退学処分になっていないのは説明がつかない。