きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

 声をかけられ、こちらを見たジェイことジェレマイアが被るフードの奥から、一瞬赤い髪が見えて。
 昨日の事を知ったご領主様が用意した、彼に体格を似せた別人かと、瞬時に恐怖に近いものが脳裏を過った。
 

 足が止まってしまったリデルに、つかつかと近付くと、男は少しだけフードをあげて、顔を見せた。
 果たして、その顔はジェレマイアだった。


「驚いた? すごい顔してる」

「ふざけないでよ、鉄槌を下してやる」

 緊張からの緩和で、してやったり顔のジェレマイアに腹が立ち、拳で彼の胸を結構本気でぶった。
 いてて、と痛がるふりをしながら、未だに笑っている口元に人差し指が立てられる。


「行こう」

 短い一言だけで、リデルは手を握られて、本屋を後にした。


 手を繋いで店を出ていくふたりを、書棚の陰からじっと見つめる女が居た。


 リデルの相手が、はっきりと顔は見えないが、おそらく容姿が良いような背の高い若い男である事が悔しくて、下唇を噛む。
 

 
 もうクラークの後釜を見つけて、いちゃつきやがって。
 お前みたいな忌むべき存在が、わたしより幸せになれるわけないんだ。


 関係者出入口からリデルが出てくるのをじっと待ち、跡を付けてきた女は、シーナ・ワトリーだった。