それでも、それが今回の帰宅時間を早めてくれるなら、父親としては歓迎するべき事だ。
 とにかく、出席すると聞いたあの男、クラーク・ライナーに付け入る隙を与えるのだけは避けたい。
 リデルが会場を早めに出てくれたら、その場の雰囲気で流されて間違いが起こることもない。

 ライナー商会とは奴の父親も含めて、自分もリデルも距離を取りたかったデイヴにとって、ふたりの交際が終了したことは、喜ばしい限りだった。



 そんな風に、デイヴの休暇は平穏に終わるはずで。
 午前中の慌ただしさや、午後からの結婚式で、絶対に疲れているであろうリデルを休ませたくて、ただ肉を焼くだけだが、今夜は夕食を作る事にした。

 じゃがいもの皮をむき、ゆでて。
 リデルがテーブルに着いてから、肉を焼く。
 後は、朝リデルが焼いたパンを、食べる直前にストーブに乗せて温め直すだけ。
 そんな簡単な夕食だが、今日の様子を聞くのが楽しみで、それが何よりの食事のスパイスになる。


 準備を終えて、リデルが戻るまでと本を読んでいたら、エラと約束をしていた時間になったが。
 そこから30分が過ぎ、1時間が過ぎてもリデルは戻らない。

 もしかしたら、律儀なリデルは帰りにケール家に寄り、エラとエルザに今日の御礼と挨拶でもしているのだろうか。
 それはありうる話だ。