リデルの症状にはお手上げでも、普通の病気だとデイヴなら、何とか出来る。

 娘のためにも、老婆には長生きをして貰いたいデイヴは、毎回老婆の家から帰る際には、体調を尋ねたり。
 ごくたまに、休日にリデル無しで、お土産を片手に老婆の家を訪れてみたりした。

 そんな時にも、老婆は約束もないデイヴを、待っていたかのように迎え入れた。



「あんた、1度は元気な娘の顔を見せておくれな」

「そうだな、今度な」

 そんな会話を幾度かしたが、デイヴも老婆も、そんな日が来ないことは分かっている上での会話だ。
 デイヴは、意識のあるリデルに老婆の事を知って欲しくは無かったし、そんなデイヴは老婆にはお見通しだったのだ。


 幸いなことに、老婆が亡くなる前に、リデルが熱を出すのは治まり、デイヴは馬車を走らせなくても、娘の寝顔を何度も見に行かなくても、良くなった。


 その時期が、娘と若様の距離が近付いていた頃だと、今になって気付いた。