◇◇◇
本邸へと走る馬車の中で、自分がこれからしようとしている事に、リデルは罪悪感を覚えていた。
帰る時間は大丈夫か、と馬車に乗る前に確認されて、頷いたけれど。
エラと約束した迎えの時間を横で聞いていたデイヴが、リデルの帰宅が遅くなれば心配するだろうとは、想像がつく。
しかし、今のリデルは気持ちを通わせたジェレマイアと離れ難くて、彼に付いていくと決めた。
嘘をつくので父には申し訳ないが、エラと話し込んでいた事にすれば、多少遅くなっても誤魔化せると思った。
エラも聞かれたら、合わせてくれるだろう、と都合よく考えた。
自分では自覚していなかったが、クラークと交際していた半年間では、時間が来たら、さっさと切り上げて帰っていた。
どんなにクラークに引き留められても、彼とまだ一緒に居たいからとか、離れがたいからとか。
それが理由で、デイヴに嘘をついた事もない。
そんな感じだったから、クラークに言わせれば『可愛げがない』リデルが、ジェレマイアになら。
デイヴに嘘をついてまで。
エラに嘘をつかせてまで。
一緒に居たい、と思ってしまう。
今じゃなければ、彼に聞けない事もある。
今じゃないと、わたしが言えない事もある。
このタイミングを逃したくない。
これからでも、ジェレマイアに帰ると言えば、黙って彼は送り届けてくれる。
けれど。
引き留められなくても、離れたくないと思い。
強制されなくても、自ら嘘もつく。
恋は人を愚か者にしてしまい、そうなることを躊躇わせない、と。
リデルは初めて知った。
本邸へと走る馬車の中で、自分がこれからしようとしている事に、リデルは罪悪感を覚えていた。
帰る時間は大丈夫か、と馬車に乗る前に確認されて、頷いたけれど。
エラと約束した迎えの時間を横で聞いていたデイヴが、リデルの帰宅が遅くなれば心配するだろうとは、想像がつく。
しかし、今のリデルは気持ちを通わせたジェレマイアと離れ難くて、彼に付いていくと決めた。
嘘をつくので父には申し訳ないが、エラと話し込んでいた事にすれば、多少遅くなっても誤魔化せると思った。
エラも聞かれたら、合わせてくれるだろう、と都合よく考えた。
自分では自覚していなかったが、クラークと交際していた半年間では、時間が来たら、さっさと切り上げて帰っていた。
どんなにクラークに引き留められても、彼とまだ一緒に居たいからとか、離れがたいからとか。
それが理由で、デイヴに嘘をついた事もない。
そんな感じだったから、クラークに言わせれば『可愛げがない』リデルが、ジェレマイアになら。
デイヴに嘘をついてまで。
エラに嘘をつかせてまで。
一緒に居たい、と思ってしまう。
今じゃなければ、彼に聞けない事もある。
今じゃないと、わたしが言えない事もある。
このタイミングを逃したくない。
これからでも、ジェレマイアに帰ると言えば、黙って彼は送り届けてくれる。
けれど。
引き留められなくても、離れたくないと思い。
強制されなくても、自ら嘘もつく。
恋は人を愚か者にしてしまい、そうなることを躊躇わせない、と。
リデルは初めて知った。



