「……」
手の中の五円玉と折りたたんだ紙を、さっきよりも強く、にぎり直す。
それから、そうっと、足音をなるべく立てないようにベッドへ近よった。
(ほんとうだ、カーテンが閉まってる……)
一番奥のベッドの周りだけ、真っ白なカーテンでしっかりとおおわれていた。
誰かがその奥にいる気配はない。
その前に立って、しっかりと礼をした。
(トリイ先輩、どうか、春海ちゃんを助けてください……!)
頭をさげたまま、そうお願いして、ゆっくりと顔を上げた。
カーテンのむこうに誰かがいる気配は、やっぱりない。
それでも、「もしかしたら」と思いながら、カーテンをめくる。
シャアッ、と音がしてカーテンが開いた。
「……そう、だよね……」
誰もいない。
そりゃそうだよね、と思ったけど、がっかりしてもいた。
たぶん、どこかで期待してしまっていたんだ、ここにわらがあるかもって。
鳥居先輩なんて学校の七不思議よろしく、妖怪みたいなものだったとしても、そもそも春海ちゃんが変になっちゃったのだって――もういいや、帰ろう、と思ったその時。
チリリリン――
誰もいないはずなのに、風も吹いていないのに。扉の横に置いたはずのランドセルの鈴が、鳴った。
(……まさか)
保健室に入った時よりもドキドキしている胸のあたりを、五円玉と紙をにぎっている手でおさえながら、ゆっくりと扉の方へ振りむいた。
「いい音だな、この鈴」
そこには、わたしのランドセルについている鈴を指先で鳴らしながらうれしそうに笑っている、同い年くらいの男の子がいた。
