「うん、知ってるよ、鳥居先輩の噂」
「ほんとうっ? 教えてっ」
次の日、わたしは隣のクラスの林香(か)苗(なえ)ちゃんのところに、トリイ先輩のことを聞きにきた。
香苗ちゃんは友達が多くて、噂話(誰と誰が付き合ってるとか、だれだれ先生が実はカツラだとか)、学校の怪談、七不思議、とにかくそういうことに詳しい。
そういえばあの日、あれについて教えてくれたのも香苗ちゃんだった。
「トリイ先輩に会ったことがある人の、友達の友達から聞いた話なんだけど――」
そう前置きをして、香苗ちゃんは話し始めた。
香苗ちゃんの話はこうだった。
一、トリイ先輩にはいつでも会えるわけじゃない。
二、トリイ先輩と会うには赤い「鳥居」の絵を描いた紙と、五円玉が必要。
三、放課後の保健室で、いつもカーテンのされている一番奥のベッドにむかって一礼する。
そうすると、そこにはさっきまでいなかったはずのトリイ先輩が現れる、ということらしい。
(……なんか、嘘っぽいというか、あんまり信じられないっていうか)
いかにも学校の怪談や七不思議って感じだ。
保健室って……神楽木先生はただ自分のところに来るようにしたいだけじゃないの?
もしかしたら先生は、春海ちゃんがおかしくなってるなんて、ほんとうは思ってないのかもしれない。
わたしが心配しているのを見て、からかったのかもしれない。
