鳥居先輩は嘘をつかない



「どうしよう……」



 ここで、こっくりさんが「はい」と答えて鳥居に帰ってくれれば、指をはなしてこっくりさんは終了になる。



「こっくりさん、帰りたくないってこと……?」



 思っていたことが思わず、言葉になってしまった。


 すると、



「っ……!」



 わたしの指をのせている十円玉が、すぅ、と「はい」の上へと進んでいった。



「あつっ……!」



 十円玉が燃えるように熱くなる。


 カタカタカタカタ、と十円玉が震え始めた。



「こっ、こっくりさん、こっくりさん、おかえりくださいっ……おかえりください……!」



 わたしの声も、指先も、十円玉と同じように震えていた。



 十円玉が動き始める。



 カタカタと震えたままで、鳥居の方へとゆっくり進み始めた。



(よかった、帰ってくれる!)



 そう思った、その時。



「きゃあっ」



 鳥居の中から、何か黒いものが出てきた。


 真っ黒で、子どもがクレヨンでぐちゃぐちゃに落書きしたみたいな、得体のしれない何かが、紙に描かれた鳥居の絵から飛び出してきた。


 それには顔なんてもちろんないのに、なんだか、じろりと見られている気がした。



「かえって、ください……!」



 熱くなった指先に強くちからを入れて、十円玉を無理やり鳥居の方へ押しやった。



「……っ!」



 その瞬間、真っ黒な何かは、風で吹き飛ばされたように教室の外へとはじき出されていった。



「っ、はぁ……」



 思い切り息を吐いた。


 ゆっくりと、指先を十円玉から浮かす。


 指先は真っ赤になっていて、燃えているみたいに熱かった。



「そうだ、これ、捨てなきゃ……」



 わたしは香苗ちゃんに教わった通り、こっくりさんに使った紙を48枚にやぶって捨てた。


 十円玉は3日以内に使えばいいって言われたけど、すぐにでも手放したくて、用事はなかったけど学校の公衆電話からお母さんに電話をかけた。

 お母さんには不思議がられたけど、家に帰っても何も聞かれなかった。



 そして、次の日。



「春海ちゃんっ! 昨日大丈夫だった?」


「……」


「春海ちゃん?」


「……大丈夫」



 学校に登校してきた春海ちゃんは、どこか遠くを見ているみたいにうつろな表情をしていた。