鳥居先輩は嘘をつかない



 すると、さっきまで吹き荒れていた風が渦(うず)のように集まって、鳥居の描かれた紙の中へと吸い込まれていった。



(なんか……わたしの言葉を吸い込んだ、みたいな)



 風がやんだ。


 鳥居の描かれた紙と五円玉が、指から離れて落ちていく。


 それを、鳥居先輩が左手で上手に捕まえて、



「契約完了」

 と言って、笑った。



「……言っただろう、言霊で契約するのだと。だから君の言葉を吸い込むのは当たり前なんだよ」



 わたしは何も言っていないのに、やっぱり鳥居先輩はわたしの気持ちを見透(みす)かしたようにそう言った。



「さて、詳しい話を聞こうか。つむぎ」





「……はい」
 わたしは、風で乱れた髪の毛をおさえながらうなずいた。

 うなずきながら鳥居先輩の髪の毛も見てみたけど、ちっとも乱れていない。




 私が説明を始めると、鳥居先輩は少しだけ考え込んだ様子で、それから、



「こっくりさん、か」


 と言った。



「はい」
「なんだか懐かしいな、数十年前にはよく聞いたが。キツネやタヌキの霊を降ろす、降霊術だな。降ろした霊に質問をして答えてもらうんだろう」


「そうです、それです」



 わたしがそう言うと、鳥居先輩が、からだの前で両手を組む。



「用意するものは十円玉、それから、白い紙です。紙に、『はい』、『いいえ』、それから五十音と、数字と――」



 そこまで言って、わたしは言葉を止めた。


 鳥居先輩の方を見ると、鳥居先輩はやっぱり少しだけ微笑んだままこちらを見て、



「鳥居の絵を描くんだろう?」


 と言った。



 鳥居先輩の言葉にうなずきながら、わたしはさっき見た光景を思い出す。



 紙に描いた鳥居。上にのせた五円玉。



 それから、まぶしく光る鳥居の絵と、不敵(ふてき)に笑う鳥居先輩……。



(……なんか、鳥居先輩って、まるで)



 そこまで考えたところで、わたしはその考えを振り払うように唇をぎゅっと結んだ。


 息を吸って気持ちを落ち着けると、もう一度説明を始める。



「え、えっと、それで、紙の上に十円玉を置いて、そこに指をのせるんです。こっくりさんが降りてくると、指をのせている十円玉が動いて、質問に答えてくれるんですけど……」



 ざわり、と風が吹いた。


 まるであの日の教室みたいに、ひんやりと冷たい風だった。