鳥居先輩は嘘をつかない



「鳥居先輩」



 鳥居先輩は、まるで初めからそこにいたみたいにそこに立っていて、まっすぐにわたしの方を見ていた。



「……お願いします」



 ゆっくりと頭を下げて、手のひらでにぎり締めていた鳥居の描かれた紙と、五円玉を鳥居先輩へと差し出す。



「……僕のことは、頼らないんじゃなかったのかい?」


「鳥居先輩を頼るのが、かしこい選択だと、言いましたよね」


「言ったかもしれないね」



 どこか他人事のようなしゃべり方は、昨日と同じだった。


 わたしは、さっき頭を下げた時と同じくらいゆっくりと頭を上げる。



「それはつまり、鳥居先輩には解決する方法を知っているってことですよね」


「……君は、やっぱりかしこい子だね」


「それに、わたしのことを偽善者だって言いましたけど、わたし……わたしも、そう思います」



 ごくり、とつばを飲む。


 それから、鳥居先輩へむかってまっすぐに言葉を投げかけた。



「だって、春海ちゃんに元に戻ってほしいのは、わたしだから。わたしは、わたしのために、春海ちゃんを助けたい。だから、わたしは偽善者かもしれないけど、それでも、わたしが春海ちゃんを助けたいって気持ちは、ニセモノなんかじゃありません」


「そう。……じゃあ面倒な説明はなしにして、さっそく契約をしようか」



 そう言って、鳥居先輩がわたしの手から紙と五円玉を受け取った。


 まっすぐに鳥居先輩の顔を見る。その表情はやっぱりどこか大人びていて、ちょっとだけドキっとしてしまう。



「……君は僕の顔が気になるみたいだな」


「え、あ、いや」



 鳥居先輩は、わたしから受け取った紙を、昨日と同じように手のひらで丁寧(ていねい)に伸ばした。



「それとも、顔色をうかがってるのかな? そんなことをしたって、君に僕の考えていることはわからないし、僕には君の考えがわかるんだ、意味はないだろう」


「そ、そういうんじゃ、ないですっ」



 顔が、赤くなりそう。


 ふるふると左右に頭を振って、鳥居先輩の言葉を否定しながら、自分の頭の中からもその考えを追い出す。