恥ずかしいとか、そういうことじゃなくて、どうしようもなく、くやしくて。

 わたしはほんとうに春海ちゃんを心配して、こんなうさんくさい噂まで頼ってどうにかしたいって思ってたのに。

 それが全部嘘だったって言われているみたいで、馬鹿にされているみたいで。

(くやしい……!)

 それなのに、わたしは何も言い返すことができなくて、それがまたくやしくて、顔がどんどん赤くなっていく。

「……もう、いいです。あなたには、頼まない」

「おや、いいのかい? ほんとうに友達を救いたいなら、僕を頼るのはかしこい選択だと思うけれど」

「っ、鳥居先輩には、友達はいないんですか! なんで、なんでそんなふうに言うんですかっ! 鳥居先輩だって、友達が困ってたら助けたいって思うはずでしょう!」

 キッ、と鳥居先輩をにらみつける。

「偽善だってなんだっていいんです! 友達が困ってるってわかってて、何もしないで無視するより、ずっとずっとマシです! 失礼しましたっ!」

 わたしは扉の所に置いておいたランドセルを掴んで、勢いよく扉を開けた。

 振りむいて扉を閉めるときに見えた鳥居先輩は、すごく楽しそうに笑っていた。


(なんなのっ、なんなのよ……!)

 最悪の気持ちで、わたしは靴箱へむかった。