運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「近いうちにちゃんと話すよ。用件がそんなことなら切るよ」

もちろん全てを正直に話して誤解を解く方法もある。
しかし、俺はもうしばらくこのままでいたいと思った。

「わかったわ。ただし、くれぐれも軽率な行動はとるんじゃないのよ」
「わかっているよ」

子供じゃないんだからとは言わないでおこう。
きっと俺が心配で電話してくれたんだ。

人は皆自分の家庭環境ってものがある。
どんなに平凡な家にだってそれなりの事情はあるし、人に言えない秘密やしがらみはある。それは、俺だって同じだ。

「電話、病院から?」
「いや、プライベートだ」

電話を切ると、梨々香が聞いてきた。
おそらく梨々香だって、何の電話なのかが気になるだろう。
それでも、あえて深くは立ち入ってこないのが控えめな梨々香らしいなと思いながら、俺は再びコーヒーを口にした。