運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「すいません、遅くなりました」

夜7時回り居残りギリギリの時間に晴斗くんのお迎え。
ちょうど帰り支度を終え園を出ようとしていた私も、入り口で一緒になった。

「お父さーん」

嬉しそうに飛び出していく晴斗くん。
毎日お迎えが遅いのがかわいそうだなと思いながらも、忙しいお父さんでは仕方がないと理解もしている。
それでも、今日の私はお父さんにお願いしたいことがあって、園を出て行こうとする晴斗くんのお父さんに向かって駆け出した。

「あの・・・晴斗くんのお父さん」
「梨々香先生、どうしました?」

やっと気づいてくれたのは、園の隣にある送迎用の駐車場に着いてからだった。
晴斗くんの手を引いたまま、お父さんが私を振り返る。

「実は、お父さんにお願いがありまして」
「お願い?」

小さな子供をお預かりする以上、日々いろいろな出来事は起きる。
成長過程の中でそれぞれの個性もあり、子供ごとにいろいろな対応だって必要になるから、その都度保護者の方にはお願い事をすることになる。
だからだろうか、私たちがこうして声をかけると身構えてしまう親御さんだっている。
中にはあからさまにめんどくさそうな顔されることもある。
この時の晴斗くんのお父さんもそんな感じだった。