運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

徹さんから現金を受け取ったことに後ろめたさはある。
へそ曲がりの見方をすれば、私も継母と同じことをしているんじゃないかという気にもなる。
でも、断り切れなかった。
私は複雑な感情を抱えたまま、片付けのためキッチンに入った。
最新型のシステムキッチンにはもちろん食器洗い洗浄機だってついているけれど、二人分の食器なら手で洗った方が早い。そう思ってカップを洗いはじめると、背中から徹さん声がかかった。

「洗い物変わるよ」
「いいえ、大丈夫」

このくらいしなくては、私はこの家にはいられない。そんな思いで、私が洗い物を続ける。

「いいから、梨々香は少し休んだらいい」
「いいの平気だから。あっ」

ガチャン。
私の手から滑ったカップが床に落ちて割れる音がした。

もー、最悪。
せっかくお揃いで買ったカップが割れてしまった。
私は咄嗟に屈みこんで割れたカップに手を伸ばしたのだが、
「痛っ」
指先に感じた痛みで動きが止まった。