運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

食事をして、お風呂に入り、時間があれば一緒にコーヒを飲みながら過ごすのが最近の私たち。
今日も私が髪を乾かしている間に徹さんが豆から挽いたコーヒーを淹れてくれた。
大きなソファーセットの向かいに座り、ちょっとだけ大きめのマグカップを両手で包み込んで口へ運ぶと、全身をコーヒーの香りが駆け抜けていく。

「やっぱり美味しいわね」
「ああ、そうだな」

先日行った自然素材の店で買ったコーヒーは本当の美味しくて、私もすっかりはまってしまった。

「なあ、梨々香?」
「何?」

不意に声を掛けられ、私は顔を上げた。

「これ、使ってくれ」

そう言って差し出された茶色い封筒は、明らかにお金が入っているとわかるもの。
私は無言のまま、徹さんを見つめ返した。

「毎日夕食を作るんだから、買い物だって必要だろ?」
「それは私が勝手にしているだけで」

家事代行サービスがお米やパンや卵などは補充してくれるけれど、日々の食材は買って帰る必要がある。でもそれは私の意思でやっていることで、徹さんに食べてもらいたいから料理を作るのだ。

「俺も食べるんだから、同じだよ。食費にしてほしい」
「でも・・・」

きっと、徹さんは朝の一件を見て、察してしまったんだ。
私は瞬間的にそう思った。