運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「じゃあ、これ。もう、ここには来ないでちょうだい」

言いたいことはもっとあるが、流星にとっては実の母だと思うから強いことが言えない。

「大丈夫よ、梨々香の邪魔はしないわ。ただ少しお金を用立ててもらいたいだけ。あなたのお父さんが事業に失敗したのせいで、私は人生を狂わされたんだから」

断ればいいのに断ることができないのは、幼いころに育ててもらった記憶があるからだろう。
財布の中のなけなしの一万円札を渡すとそれを受け取り、じゃあねと手を振って歩いて行く継母を見ながら、私はまた肩を落としてしまった。
困ったものだなとしょんぼり下を向いていると、なぜか後方から視線を感じた。
何だろうと思って振り返ると、そこには信号待ちの車があって、運転席には徹さんがいた。
どこまで見られていたのかはわからないが、おそらく私と継母とのやり取りを見たはず。そう思ったら今すぐここから消えてなくなりたい気持ちだった。
そうしているうちに信号が青へと変わり、徹さんは車を発進させた。