運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

しかし、いつものようにマンションを出て駅へ向かう途中、私は突然肩を叩かれ声をかけられた。

「久しぶり」

聞き覚えのある声は少しだけ毒を吹くんだような女性のもの。
咄嗟に嫌悪感を覚えて、私の体が硬くなる。

「元気そうね。それに、随分いいところに住んでいるじゃないの」
「どうして、ここに?」

現れたのは、父が亡くなった後私と弟を置いて出て行った継母だった。
父が亡くなって祖母の家に預けられた私たちのもとに継母が顔を出す事は一度もなかったのに、最近になって姿を見せるようになった。
私の中に捨てられたんだという思いはあるし、寂しい思いをした弟のことを思えば顔も見たくもないのだが、父によって自分の人生が狂わされたと愚痴り、資金繰りのために自分の蓄えていたお金を全部使われたと主張する継母に、何も言えなくなってしまうのがいつものパターンだった。