運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「それ、やめてくれない?」
「え?」

それというのが何を指すのかがわからず、私は首を傾げた。

「ここは病院じゃないんだから、『先生』って呼ぶのはやめてもらえないか?」

ああ、なるほど。
家の中でも先生って呼ばれたら、気が休まらないのかもしれない。
保育園で『先生』と呼ばれる私も、気持ちは理解できる。

「ごめんなさい、改めますね。えっと・・・」

なんて呼ぼうかと考えて迷ってしまった。
「佐山さん」か、それとも・・・

「徹でいいよ」
「イヤイヤそれはちょっと」

さすがに呼び捨てはできない。

「俺は梨々香って呼ぶよ。その方が友人らしいだろ」
「そうですね。じゃあ私は・・・徹さんで」
「わかった、それでいい」

徹さんは嬉しそうに頷いた。
確かに、友人としてここにいるなら、名前で呼ぶのが普通かもしれないと私も納得した。