運命みたいな恋は、ほら！すぐそこに転がっている

「でもそのことと、私にここにいてもらいたい事情は何か関係があるんですか？」
「それなんだが・・・」

ちょっとだけ困ったように、佐山先生は視線を落とした。

「どうぞ仰ってください」

それを聞かないことには私はここにいることができない。

「最近、母の実家から縁談が頻繁に持ち込まれて困っているんだ」
「縁談、ですか？」
「ああ、要は見合い話なんだが、しつこくて辟易している」
「それは大変ですね」

相槌は打ったものの、なんだお見合いかというのが素直な感想。

「これでも仕事が忙しくて時間もないし、何とか断る方法はないかと考えて、付き合っている女性がいることにすればいいかなと思ったんだ」
「まあ確かに、恋人がいればお見合いは勧めませんものね。って、もしかして・・・」

それを私にという話ではないですよねと聞きかけて言葉が止まった。
それは、さっきまで下を向いていた佐山先生が、真っすぐに私のことを見ていたからだった。