運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「このマンション、豪華だろ?」
「ええ、とっても」

一介の勤務医が住む場所とは思えない。
だからこそお金持ちのお坊ちゃんなのかなと思った。

「ここは母に実家が持っているマンションで、頼まれて使っているんだ」

何だやっぱりお金持ちなんじゃないの。
しかし、その話をする佐山先生の表情が暗くて違和感を覚えた。

「うちの両親は駆け落ちで一緒になっていて、母の実家は父が亡くなった今でも母を連れ戻そうとしているんだ。そればかりでなく、血のつながった俺に家を継がせようと必死だ」
「だからマンションを」
「ああ、金で俺の気を引こうとでも思っているんだろうな」

この時、私は佐山先生が気の毒に思えた。
今まで何度もお金がなくて苦労をしてきたけれど、お金があるってことも苦労があるのだなとはじめて知った。