運命みたいな恋は、ほら！すぐそこに転がっている

火事で焼け出され行き場を失ったといえば、東京に身寄りのいない地方出身者なのだろうと想像するのかもしれない。
私が自分の口でそうだと言った覚えはないが、そう誤解されても仕方がない態度をとったと思う。
だからこそ、私ははっきりと答えた。

「私が生まれ育ったのは東京なんです。母は私が4歳の頃亡くなって、父も私が中学の頃に亡くなったので、今はもう両親はいません。父の生まれた実家も都内にありましたが、祖父母も亡くなり家も残っていません」
「ごめん、辛いことを聞いたね」
「いえ、平気です。それに、私には6歳下の弟がいるので寂しくはありません」
「そうか、弟さんが」

ウンウンと頷きながら、佐山先生が私を見ている。
私はこの後、自分の生い立ちや家族のことを少し話すことにした。