運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「さあどうぞ」

リビングへと戻って来た佐山先生が差し出してくれた温かな紅茶。
幾分寒さを感じていた私は両掌でカップを包み込んだ。

「10月とはいえ夜は冷えるから、寒かっただろう」
「ええ、そうですね」

思えば火事場から逃げ出して来たままの私は、部屋着にしていたジャージ姿。
深夜のために人目につくこともなかったが、改めて見れば恥ずかしい格好だ。

「フロントに着替えと日用品を頼んであるから、もうじき届くはずだ」
「そんな、そこまでしていただくわけには・・・」

申し訳ないと思い断ろうとした私が声を上げたタイミングで、玄関のチャイムが鳴った。

「遠慮しなくてもいいんだよ、困ったときはお互い様だ」

そう言うと、佐山先生は玄関へと向かって行った。