運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

人気のない裏口へと向かう通路まで来たところで、「ありがとうございました」と頭を下げる彼女。
しかし、「バイトなのか?」と聞いて曖昧な返事しか返さない。
余計なこととは知りながら、俺は「君には向かいない仕事だと思うよ」と説教のようなことを言ってしまい、本当にらしくもないと自分でも後悔した。
しかし、それに対して彼女は俺の年齢を聞いてきた。
この展開は大抵俺が年下に見られている時だぞと思いながら「28歳だよ」と答えると、やはり彼女は驚いた顔をした。
その後、「童顔のせいで若く見られるんだ」と言うと「そうですよね」と言って口を手で押さえた彼女の反応に思わず笑った。
一連のやり取りで警戒心の取れた俺たちは、お互いの名前と歳を名乗ることができた。
しかしこの時の俺は、彼女に会ったら診察室での非礼を詫びようと思っていたことを忘れていた。