運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「梨々香さんはアパートが全焼したのを知っていますか?」
「え」

全焼という言葉を聞いて、頭が真っ白になった。
私が部屋を出たときには煙だけだったし、きっと大きな被害はないだろうと思っていた。
まさか自分のアパートが本当に燃えてしまうなんて、想像していなかった。

「今夜はアパートにも帰れませんし、病院へ泊まった方が得策だと思いますが?」
「それは・・・」

本当にアパートが全焼してしまったのなら、当然私の帰る場所はないし、明日の支度どころの騒ぎではない。何しろ私には行くあてがなくなったのだから。しかし・・・

「それでも、私は帰ります」

私ははっきりと告げた。
昔から『梨々香は変なところで頑固な子だ』と、よく父が言っていた。
自分でもその自覚はある。
ただ、たとえどんな結果であっても自分の目で見ないと信じられない。