運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「診察したところ気になる所見はありませんが、念のために一晩様子を見ましょう」
「え、入院ですか?」

佐山先生に言われ、私は身を乗り出した。
考えてみれば意識喪失で運ばれた患者に入院を勧めるのは当然の対応なのかもしれない。
経過観察もせずに帰すのは危険なことのだろうと、素人でもわかる。
でも、私は元気だからこそ帰りたいと主張した。

「できれば自宅で様子を見たいと思います」
「しかし・・・」

困ったような顔をする佐山先生。

「明日は仕事もありますし、入院は困ります」
「梨々香さん」

入院は嫌だと主張する私を困ったような顔をして見ていた佐山先生が、ちょっとだけ声を落とし私の名前を呼んでまっすぐに目を合わせてきた。

「はい」

何か特別な話もされるのだろうかと私も息を飲んだ。